スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員
アメリカのある湖畔の町。
その町の小山を中心に突如大嵐がおき、街を嵐が覆う。
そして嵐が去った湖畔の街は霧で覆われ始める。
携帯電話も公衆電話も通じない。
この深い霧に包まれた街で巻き起こる怪異を描く。
ゲーマーに取っては、この作品の原作となる、
キングの「霧」は、サイレントヒルの元となっている。
舞台が「湖畔の町」だったり、共通点も多い。
この作品は「ミスト(The Mist)」として映画化されているが、
これより随分先に、「ザ・フォッグ(1979年)」という映画もあったりする。
キングの霧を参考にはしてない(霧の執筆は、この映画の後)
で、この映画のジャンルだが、一応は「ホラー」ではあるが、
個人的には「閉鎖空間内のパニックもの」というのが、
ボク自身が見て思った感想である。
ネタバレを見たくなく、鑑賞に行きたいという方向けの意見としては、
これはカップルで見る映画じゃなく、
ボクのようにおひとりさまでも見に行ける方向けって所だろう。
監督はフランク・ダラボン。
「ショーシャンクの空に」や「グリーンマイル」を手がけた人だが、
この映画、2007年アメリカ公開時には、見事にコケたのである。
その理由は何でだろうって訳ですが。
という訳で、以下はネタバレを多量に含むのでご注意を。
というか、話のオチに触れてます。
「ザ・フォッグ(1979年)」で人々に襲い掛かってくる霧の正体は、
6体の海賊の亡霊なわけだが、この作品では、
この世とは違う世界に存在している「異型の何か」である。
まぁ虫のデカイやつ。蜘蛛っぽいのが多い。ボクは嫌いだ。
さて、この作品はハリウッド映画ではなく、
ベースは「ホラー」なのだが、ダラボン作品という事で、
公開する側は、「ハリウッド映画的」な宣伝をしてしまったようだ。
これが大きくコケた理由の一つだと思う。
言うなればこの作品は「B級」なのである。
もっと言うと、典型的なホラー映画のプロット通りでもあるのだ。
そしてもう一つ。
結論から書くと、映画の宣伝でも触れられているように、原作と結末が違う。
原作の方は、主人公と子供と女の人の3人でスーパーから車で脱出し、
道中、車のラジオの放送に、避難所があるから生存者は来てくださいという情報が入り、
そこに行けば希望があるぞってところで終わる。
で、映画の方の結末は、後で書くが、あの終わらせ方でも、
ダラボンとキングで話し合って、お互い納得の上でのラストなのだ。
しかし興行的に振るわなかったのは、そのラストが余りよくなかった、
そう解釈してもよいだろう(アメリカのDVDの売れ行きも含めて)。
ホラーのプロットと言うと、いくつかパターンがあるが、
この作品は、ロメロの「ゾンビ」型プロットに似ている。
閉鎖空間、そして狂信者の行動なんかはその辺りだろうか。
ロメロ映画の共通は、敵は外界のゾンビだけではなく、
「ゾンビ」の場合は、ショッピングセンター内に閉じ込められ、
何時襲われるともわからぬ不安と、センター内のモノを独占したいという欲、
「死霊のえじき」は、地下内での、軍部と研究者との対立、
「ランドオブデット」では、金持ちvs貧乏人。
本当の絶望の要素は、ゾンビでは無いというのが、
このプロットではないかと思う。
で、ミストな訳ですが。
これがハリウッド映画ならば、霧の中の得体の知れぬ化け物に対し、
衝突はありながらも、次第に一致団結し、物語はハッピーに向かう訳だが、
「ミスト」はホラー映画なのである。ホラーには皮肉がつき物だ。
結局、最後の最後まで、スーパー内の人々はバラバラのままだったりする。
スーパーの資材置き場で、巨大生物と遭遇・戦闘し、
スーパーのバイト君が犠牲になる。
その事を、分別ある弁護士に伝えるのだが、
現実を重視する一派はコレを認めず、霧の中へ。で、当然犠牲になる。
その一方で、「終末の時が来た」と神の怒りと聖書の一説を語る女性が、
最初はまったく相手にされていなかったが、
怪物との遭遇を経て徐々に支持を集めていく。
もちろん、聖書の一説は、状況にあった都合の良い所しか言わないが、
ここから後はホラーでお馴染み、デッチあげの犯人探し。
そしてスーパーからの脱出。
物語は収束へ向かう。
ロメロの作品は、ゾンビものだが、それぞれの作品で、
キチンとイイタイコト、いわゆるテーマがはっきりしていた。
ダラボンの成功した2作もそうだった。
反面、受けの悪かったあのラストは、反響多数なのもわからないでもない。
破壊されている街の残骸。
建物をも上回る大きさの化け物。
そして切れるガソリン。
その絶望状況の中で、主人公は、
「化け物にだけはボクを食べさせないでね」
という息子の願いを違う形でかなえてしまう。
そしてその直後のかのラスト。
キリスト教徒の多いアメリカでは、そりゃ受け入れられんよなぁ、とは思うラスト。
ハリウッド映画的に見ていたら、あのラストは後味の悪さしか無いだろう。
なお、一番初めにスーパーを脱出したオバサンは、子供と共に軍に救出されている。
そして、瓦解した街の中で、ひっくり返り、破壊される車の数々の中で、
冒頭に現場に向かっていたパトカーは、被害を受けていたが、
何故か、軍部の車両の残骸は無かった(ように見えた)。
記憶が間違い無いのならばだが、以上の事が確かなら、
化け物への知識・対抗手段を持つ、軍部の車両は、一切被害が無い。
そこはエンディングで火炎放射をするあの映像からも推測できる。
原作では、霧の世界の決別についての言及は無かったが、
映画では霧の世界は、人のチカラで排除できる事を示している。
ヒトと化け物との戦いを描き、ITなどもそうだが、
ヒトでも化け物を駆逐できるというキング的な話なら、
この終り方はアリかな、とボクは思うわけだ。
なぜなら、原作の終わり方だと、ヒトは霧の世界に勝てないかも、
という終わり方もあるわけだ。
しかし、映画のミストでは、「ヒトは霧の中の世界に勝てた」のだ。
しかも完璧に。確実に。コレは希望だと思う。
ホラーだと、倒せないまま終りなのが多いわけですから。
最後に、この映画の中で、ボクが一番気に入った台詞を
「人間なんて愚かだよ。部屋に2人以上いればすぐに争いが起こる」
嘗ての名映画ゾンビへのオマージュでもある言葉でもあるなぁ。
あの時は3人だったが。
個人的には、霧で覆われた街の映像が、
ホント、ゲームのサイレントヒルそのまんまだった。
プレイステーションの1作目を髣髴とさせる映像だった。
リメイク、しないかなぁ。